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遠藤: コンベックスも来年10周年を迎えます。経営理念はいうなれば私だけの思いで作ったものであり、社員が認識しているのか、言葉と実態があっているのか気になるところです。そういった意味では、10年位を節目に私一人で作ったものをもう一回今の営業内容に落とし込んで、幹部社員とともにつくることも考えています。
田代: 理念の精神は変えず表現の仕方を社員とともに再構築するのはいいことだと思います。再構築をする場合、ベストプラクティスから進めていくやり方があります。
遠藤: ベストプラクティスですか?
田代: そうです。営業活動をしていると、「これぞまさしく理念が達成された形だ」といえる事例が出てくると思います。それらを集め、理念の本当の意味やそれをもっとわかりやすくするにはどうしたらよいかを突き詰めていくのです。このプロセスを経ることで理念に込められた精神がはっきりみんなに伝わるようになります。
遠藤: なるほど。プロセスで自分たちの理解を深めていくということですね。
田代: 理念の再構築をみんなで知恵を出しあいながら進めることで、社員は理念に親近感を持ち始め、各自の仕事の実践の中で生かされるようになってきます。
遠藤: そういえば、 20年、50年、100年と長く続く会社にはしっかりした理念がありますね。
田代: そうですね。精神は変わらないが、やり方は変わっているところが伸びているように思います。先ほども話しましたように、理念は会社が存在する最も根本にあたるものです。だからこそ注意が必要なのです。変えちゃいけないところを変えてしまい会社の存在価値も揺らいでしまうこともあります。変えなきゃいけないところと変えちゃいけないところをしっかり区別することが重要なのです。
遠藤: 永続している企業がある一方で、不況になってくると、「本当にこの事業を続けていいものか」と悩まれる経営者もいると思うのですが…
田代: そんなときこそもう一度「何のために我々はこの事業をしているのか」「なぜ存在しているのか」をもう一度理念に立ち返って考え、場合によっては再構築することがあってもいいと思います。大変な時代ですから、再出発や新しいステージを踏むために理念を再構築し、心機一転再スタートを切るという考え方もありますね。
遠藤: 経営理念を作られていない経営者の方は、この機会に経営理念を作られてもいいかもしれませんね。
田代: そうですね。少なくとも理念や哲学がない会社は状況に振られてします。経営は本筋を見失うと動揺します。そして人心が乱れます。理念や哲学がしっかりしているかどうかでシナジー(相乗効果)が決まってきますね。価値観が多様化している時代ですからね、価値観をどこかに統一させないとシナジーが出ないと思います。それが理念の本質的な意味だと思いますね。
遠藤: 最近思うのですが、会社を継承される方が社長に就いた時に、その人がもう一度経営理念、経営指針、行動指針を見直すというのはどうなのでしょうか?創業者はカリスマ性があって決定はトップダウンですが、2代目はボトムアップによって目指していくというケースが多いかと思います。継承する時期に見直すというのはどうでしょうか。
田代: 大変いいタイミングだと思いますね。本来理念はトップダウンなのですが、ボトムアップから意義を問い直すことで、全員が理念と向き合い、理解するプロセスが生まれるいい機会だと思います。実施されるといいと思います。理念の精神をみんなで議論し、そこに新しい社長の考えをどう付け加えていくかを考えていくと有効だと思いますね。
遠藤: 理念を作る・見直すタイミングというと、会社承継のタイミング以外に、起業のときがありますね。私は前の会社でいろいろ企業を見てきて、やっぱり会社には理念が必要だなぁと思ったし、人事制度がない会社には人が来ないと思って早くから準備していました。
田代: 確かに、起業の時はまさに理念そのものの意味、創業の精神ですからね。それから、合併・分社するときも重要なタイミングでしょうね。
遠藤: 理念を作る・見直す際、最も注意しなければいけないのはどういうことでしょうか?
田代: 大きく制度を変えるときは大事ですね。制度は流行として取り入れられることがあります。実は制度を変えると企業風土が変わります。新しい制度を取り入れる際は、理念と照らし合わせてどうなのかをしっかり検討する事をお勧めします。照らし合わせをしないで一気に制度を取り入れたことで、せっかくのいいものを失ってしまう危険があります。大きな制度改革をするときこそ、理念に照らして入念に再検討しなければいけません。

遠藤: 私は盛和塾に入っていますが、塾生の方の経営理念など発表会を聞いたりもします。その中で「全従業員の物心両面の幸福の追求」という言葉をよく耳にします。
田代: その言葉が出るということは、社員が誇りを持ち、やりがいや生きがいを感じながら仕事をすることと、収益を確保することの両方を追求するのが時代的な要請なのでしょう。なんだかんだ言っても、収益が上がらなければ企業が存続しません。しかし、そこにだけ特化してしまっては意味がないし、かといって慈善事業ではないので心のところだけでもダメだ、ということでそういう言葉をよく使われているのかもしれませんね。
遠藤: 「物心両面」という言葉、これは稲盛さんの経営哲学であって、私は経営者である以上は自分の言葉でその会社の理念を言いたい・伝えたいと思っています。
田代: そうですね、もっと独自の言葉で表現できるといいですね。こういうときこそ若い人たちの感性をいれて言葉選びをするともっと違う表現ができるかもしれませんね。理念は実践されなきゃ意味がないので、いくら社長が掲げて毎日怒鳴っても、下の者がどれだけその思いを感じ取って「なるほど、こういう理念・行動指針なら共感できる」と思ってくれなければ意味がないですよね。そういう思いを盛り上げるためにも社員を参画させて再構築させるのはいいと思いますね。そして、簡潔でズバリ誰が見ても覚えやすい、ピンとくる形が理想ですね。

遠藤: 理念について様々なお話を聞かせていただきましたが、理念の本質はどういうところにあると思われますか?田代さんのご意見を聞かせてください。
田代: 理念の中には人を戒めるもの(例えば、人間の弱さを責めたり、油断すると悪さをすることを咎めたりするもの)があります。しかし、わたしはそうではなく、積極的に潜在能力を発揮できる風土が作れるかが理念の重要なところだと思います。
遠藤: 能力が発揮できるのは、きっと会社に行くのが楽しくてたまらないと思える風土かもしれないですね。
田代: そうですね。イキイキ、ノビノビ、楽しく仕事ができる風土作りのための基本原理となる理念を経営者の方には作ってほしいですね。
遠藤: そうですね。それができると社員は幸せでしょうね。
田代: 企業も社員も幸せになるためには、人間の本質に照らし合わせたものでなければならないとも思います。そのもっとも基本となる考え方が、「人間として正しいことを正しく行う」ことだと思います。これは京セラフィロソフィにある考え方です。この哲学、この人としての生き方・取り組み方に基づいてみんなが正しく行動していくために行動指針があり、その先には価値観を統一させるものとして理念がありまます。この理念がしっかり社員に浸透しているかどうかで社員がどう生きるか、どう成長していくかに関わってきます。そしてひいては企業と社員が幸せになれるかどうかを左右してくると思います。

最後は抽象的な話になってしまいましたが、理念の短い言葉には大きな可能性が秘められていることがご理解いただけたのではないかと思います。
遠藤: たいへん貴重なお話、ありがとうございました。
田代: ありがとうございました。

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